粗利率とマークアップ率は何が違う?──「原価に3割乗せ」が粗利3割にならない理由
粗利率(マージン=売価基準)とマークアップ率(原価基準)は別物です。「原価に3割乗せた」のに粗利率は23%にしかならない理由と、原価から目標粗利率の売値を正しく『割り戻し』で出す方法を、早見表つきで解説します。
「原価に3割乗せて売ってるから、粗利は3割あるはず」──そう思って値段を決めていませんか。実はこれ、よくある勘違いです。原価100円のものに3割(30円)乗せて130円で売っても、**粗利率は約23%**にしかなりません。
なぜ「乗せた割合」と「利益の割合」がズレるのか。原因は、粗利率(マージン率)とマークアップ率の基準が違うことにあります。
結論を先に書きます。
マージン率は「売価」を分母にし、マークアップ率は「原価」を分母にする。 だから同じ商品でも数字が変わり、原価から売値を出すときは「掛ける」のではなく「割り戻す」のが正解です。
粗利率(マージン)とマークアップ率の違い
どちらも「粗利(売価 − 原価)が、何に対して何%か」を表す指標ですが、分母が違います。
| 指標 | 計算式 | 分母(基準) |
|---|---|---|
| 粗利率(マージン率) | 粗利 ÷ 売価 | 売価が基準 |
| マークアップ率 | 粗利 ÷ 原価 | 原価が基準 |
具体例で見ます。原価100円 → 売価150円のとき、粗利は50円です。
- マージン率 = 50 ÷ 150 = 33.3%
- マークアップ率 = 50 ÷ 100 = 50%
同じ商品なのに、片方は33.3%、片方は50%。どちらも正しいのですが、基準が違うので数字がズレます。決算書や粗利管理で使うのはふつう「売価基準のマージン率」のほうです。
「原価に3割乗せ」が粗利3割にならない理由
冒頭の落とし穴を分解します。「原価に3割乗せる」というのは、**マークアップ率30%**のことです。
- 原価:100円
- 乗せる額:100 × 30% = 30円
- 売価:130円
- 粗利:30円
ここで**粗利率(マージン率)**を計算すると、
- 粗利30 ÷ 売価130 = 約23.1%
「3割乗せた」のに、利益の割合は約23%。乗せた感覚(30%)と、実際に手元に残る割合(23%)が7ポイントもズレるわけです。
この差は、マークアップ率が大きくなるほど開きます。「原価の2倍で売っている(マークアップ100%)」場合でも、マージン率は50%です。「倍で売ってるから利益率5割超え」ではない、というのが直感に反するポイントです。
値決め・粗利率を整える では、原価と売価を入れるだけで両方の率を同時に表示するので、このズレを取り違えずに済みます。
マークアップ率 → マージン率 対応早見表
原価を100に固定して、売価を動かしたときの両率の対応です。「乗せた感覚」と「実際の粗利率」のギャップを一覧で確認できます。
| 原価 | 売価 | 粗利 | マークアップ率 | マージン率(粗利率) |
|---|---|---|---|---|
| 100 | 120 | 20 | 20% | 16.7% |
| 100 | 130 | 30 | 30% | 23.1% |
| 100 | 150 | 50 | 50% | 33.3% |
| 100 | 167 | 67 | 67% | 40.0% |
| 100 | 200 | 100 | 100% | 50.0% |
| 100 | 250 | 150 | 150% | 60.0% |
右の2列を見比べると、マークアップ率は必ずマージン率より大きく出ることがわかります。「原価に乗せた割合」で利益を語ると、いつも実際より良く見えてしまうのです。
目標の粗利率から売値を出すには「割り戻す」
ここがいちばん実務で間違えやすいところです。「粗利率30%が欲しい」とき、原価に1.3を掛けてはいけません。
たとえば原価700円で粗利率30%を狙うとき、
- ❌ 掛ける:700 × 1.3 = 910円 → 粗利210 ÷ 910 = 約23%(目標未達)
- ⭕ 割り戻す:700 ÷ (1 − 0.3) = 700 ÷ 0.7 = 1,000円 → 粗利300 ÷ 1,000 = ちょうど30%
公式にすると、
売価 = 原価 ÷ (1 − 目標粗利率)
「掛ける(× 1.3)」のはマークアップの発想で、「割り戻す(÷ 0.7)」のがマージンの発想です。目標が売価基準の粗利率なら、必ず割り戻してください。910円と1,000円では、1個あたり90円・粗利率で7ポイントも変わります。
自分の原価で売値を出す
早見表は原価100の例ですが、実際の商売では原価が中途半端な数字になります。「原価680円のメニュー、粗利率35%にしたい売値は?」のような計算を毎回手でやるのは面倒です。
値決め・粗利率を整える に数字を入れると、
- 原価と売価から → マージン率・マークアップ率の両方を同時表示
- 原価と目標粗利率から → 割り戻した売値を自動計算(掛け算の罠を回避)
- 売価から原価を逆算 → 「この値段なら原価をいくらに抑えるべきか」
がその場で出ます。「目標粗利率を入れたら売値が出る」ので、勘で乗せて後から利益不足に気づく、という事故を防げます。
なお、最後に心理的価格の調整も忘れずに。割り戻した売値が1,000円でも、店頭では**¥980 や ¥1,980 のような端数価格**にしたほうが売れやすい場面があります。そのときは「端数にしたぶん粗利率がどう変わるか」を 値決め・粗利率を整える で再確認してから決めると安全です。
関連ツールとのシナジー
- その売値で黒字にするには月何個売ればいいか → 損益分岐点(BEP)を整える(固定費を粗利で割って必要販売量を出す)
- 売値の税込・税抜を正しく出すなら → 消費税を整える(粗利計算は税抜ベースで行うのが基本)
- 値決めそのものは → 値決め・粗利率を整える
「1個あたりの粗利率」と「それを何個売れば黒字か」はセットで考えると、値段の根拠がぶれません。
まとめ
- 粗利率(マージン率)= 粗利 ÷ 売価、マークアップ率 = 粗利 ÷ 原価。分母が違う別の指標
- 原価100 → 売価150 なら、マージン33.3%・マークアップ50%
- 「原価に3割乗せ(マークアップ30%)」の粗利率は約23%。乗せた感覚と利益の割合はズレる
- 目標粗利率から売値を出すときは掛けずに割り戻す:売価 = 原価 ÷ (1 − 目標粗利率)
- 原価700・粗利率30%なら 700 ÷ 0.7 = 1,000円(700 × 1.3 = 910円では粗利率23%)
- 心理的価格(¥1,980 など)に寄せたら、粗利率を再確認する
- 計算は 値決め・粗利率を整える が早い
「乗せた割合」ではなく「売価に占める利益の割合」で値段を決める。この基準を揃えるだけで、値決めの精度が一段上がります。