損益分岐点とは?──「月いくら売れば黒字」をカフェの例で計算してみる
損益分岐点(BEP)の意味を、固定費・変動費・限界利益から組み立てて解説。コーヒー1杯500円のカフェを例に「月いくら売れば黒字か」「1日何杯か」まで実数で計算します。
「うちのカフェ、月にいくら売れば黒字になるんだろう?」──お店をやっていても、副業でショップを始めても、最初にぶつかるのがこの疑問です。感覚で「まあ100万くらい売れれば…」と思っていても、その根拠を説明できる人は意外と少ない。
結論を先に書きます。
黒字と赤字のちょうど境目になる売上を「損益分岐点(BEP)」と呼び、計算式は「固定費 ÷ 限界利益率」のたった一行です。あとで出すカフェの例だと、固定費 月50万円・コーヒー1杯500円(原価150円)のお店で、損益分岐点はおよそ月71.4万円=1日あたり約48杯になります。
損益分岐点(BEP)とは
損益分岐点(Break-Even Point、略してBEP)とは、売上と費用がちょうど一致して、利益がゼロになる売上高のことです。
- 売上がこのラインを超えれば黒字
- 下回れば赤字
つまり「最低でもここまで売らないと赤字」という防衛ラインであり、目標を立てるときのスタート地点でもあります。
これを計算するには、費用を2種類に分けて考えるのが第一歩です。
固定費と変動費の違い
費用は「売上が増減しても変わらないか/一緒に動くか」で2つに分かれます。
| 種類 | 意味 | カフェでの例 |
|---|---|---|
| 固定費 | 売上に関係なく毎月かかる | 家賃、正社員の給料、リース料、水道光熱の基本料 |
| 変動費 | 売れた分だけ増える | コーヒー豆・ミルク・カップなどの原価 |
ポイントは、人件費は固定費と変動費の両方に分かれること。月給で雇うスタッフは固定費、忙しい日だけ来てもらうアルバイト代は変動費寄り、と実態で振り分けます。
この区別ができていないと、損益分岐点はそもそも計算できません。「自分のお店の費用、どっちに入る?」が迷う人は、まず 損益分岐点(BEP)を整える に費用を入力しながら仕分けると感覚がつかめます。
限界利益と限界利益率
費用を分けたら、次は「1個売れたら、いくら手元に残るか」を見ます。これが限界利益です。
- 限界利益 = 売価 − 変動費
- 限界利益率 = 限界利益 ÷ 売価
コーヒー1杯を例にすると:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売価 | 500 円 |
| 変動費(原価) | 150 円 |
| 限界利益 | 350 円 |
| 限界利益率 | 70%(350 ÷ 500) |
つまり1杯売るごとに、変動費を差し引いた **350円が「固定費を回収するための原資」**になります。この350円を積み上げて、月50万円の固定費を埋め切った瞬間が損益分岐点、というわけです。
損益分岐点を計算する2つの式
損益分岐点は「金額」でも「個数」でも出せます。
① 損益分岐点売上高(円)
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
② 損益分岐点の販売数(個・杯)
販売数 = 固定費 ÷(売価 − 変動費単価)
①は「いくら売れば」、②は「何個売れば」を答えてくれます。どちらも分母が違うだけで、考え方は同じ「固定費を限界利益で割る」です。
カフェの例で計算してみる
では実際に、冒頭のカフェで数字を入れてみます。
前提
- 固定費:月 50 万円(家賃・人件費の一部など)
- コーヒー:売価 500 円/原価(変動費)150 円
- 限界利益:350 円/限界利益率:70%
① 損益分岐点売上高
50万円 ÷ 0.7(限界利益率70%)≒ 71.4 万円
② 必要な販売数
50万円 ÷ 350円 ≒ 1,429 杯(月)
③ 1日あたりに直す(月30日営業)
1,429杯 ÷ 30日 ≒ 約48杯/日
つまりこのカフェは、月71.4万円・1日およそ48杯を売って、ようやくトントン。ここを超えた分が、はじめて手元に残る利益になります。「1日48杯」と聞くと、開店から閉店まで1時間に5〜6杯。混む時間に偏ることを考えると、決して楽な数字ではないとわかります。
値下げ・原価上昇でBEPはどう動く?
損益分岐点は固定ではありません。値付けや仕入れが変わると、敏感に動きます。
| ケース | 売価 | 変動費 | 限界利益率 | BEP売上(固定費50万) |
|---|---|---|---|---|
| 基準 | 500 円 | 150 円 | 70% | 約 71.4 万円 |
| 値下げ(−50円) | 450 円 | 150 円 | 約 67% | 約 75.0 万円 |
| 原価上昇(+50円) | 500 円 | 200 円 | 60% | 約 83.3 万円 |
| 値上げ(+50円) | 550 円 | 150 円 | 約 73% | 約 68.5 万円 |
注目すべきは、たった50円の値下げや原価上昇で、必要売上が数万円単位で増えること。「集客のために50円下げよう」という判断は、損益分岐点を押し上げて自分の首を絞めることがあります。逆に、限界利益率を上げる値上げや原価カットは、BEPを大きく下げてくれます。
安全余裕率もセットで見る
実際の売上が損益分岐点からどれだけ離れているかを示すのが安全余裕率です。
安全余裕率 =(実際の売上 − 損益分岐点売上)÷ 実際の売上
たとえば実売上が月100万円なら、(100 − 71.4)÷ 100 = 約29%。「売上が29%落ちるまでは赤字にならない」という余力の指標で、これが小さいお店ほど不況や客足の波に弱い、と読めます。
自分の数字で計算するには
ここまでの式は、電卓でも追えるシンプルなものです。ただし実際のお店は、商品が何種類もあって限界利益率がバラバラだったり、固定費に減価償却が混ざっていたりと、手計算だと面倒になりがちです。
そこで、損益分岐点(BEP)を整える に自分の数字を入れると、
- 固定費・売価・変動費を入力するだけでBEP売上高と必要販売数を自動計算
- 「あと何個で黒字か」「目標利益を出すには何個か」を逆算
- 値下げ・原価上昇のシミュレーション
- 安全余裕率の表示
がその場で出ます。「いまの値段のままで黒字にできるのか、それとも値上げが必要なのか」を、感覚ではなく数字で判断できます。
関連ツールとのシナジー
- そもそも値段をいくらに設定すべきかから決めるなら → 値決め・粗利率を整える(粗利率からの売価逆算・マークアップ計算)
- 損益分岐点を決算書の全体像の中で理解するなら → BS / PL を整える(固定費・変動費が損益計算書のどこに乗るか)
- BEP → 値付け → PL、と3つを行き来すると「1杯の値段」から「お店全体の利益」までが一本の線でつながります
まとめ
- 損益分岐点(BEP)= 利益がゼロになる売上。超えれば黒字、下回れば赤字
- まず費用を固定費(家賃・人件費の一部)と変動費(原価)に分ける
- 限界利益 = 売価 − 変動費、限界利益率 = 限界利益 ÷ 売価
- 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率/販売数 = 固定費 ÷(売価 − 変動費単価)
- カフェ例(固定費50万・1杯500円/原価150円)→ BEP売上 約71.4万円・約1,429杯・1日およそ48杯
- 値下げ50円や原価上昇50円で、必要売上は数万円単位で動く。安全余裕率もあわせて見る
- 自分の数字での計算は 損益分岐点(BEP)を整える が早い
「月いくら売れば黒字か」を一度きちんと出しておくと、値付け・仕入れ・集客の判断がぜんぶブレなくなります。