ネットワークを整える
中級ルーティングを整える。
= 宛先IPが「どの経路」に届くかを、最長一致の照合過程ごと見る
ネットワークのどこの話? 会社の中や、会社とインターネットの間(LAN と WAN の境目)で、ルーターが「次にどこへ渡すか」を決める話です。OSI 参照モデルの第3層(ネットワーク層)にあたります(OSI参照モデル)。
ルーティングが初めての方は、先に そもそもルーティングとは・どんな場面で使うか をどうぞ。
アニメで見る — パケットが宛先にたどり着くまで 開くと1ステップずつ動きます
PC
送信元
ルータA
ルーティングテーブルを照合
ルータB
宛先ネットワークに直結
STEP 1
※ イメージ図です。実際の通信は行いません。下で実際に最長一致の判定を試せます(送信ゼロ)。
プリセット例
| 宛先ネットワーク | プレフィックス長 | ネクストホップ | 情報源 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 0.0.0.0 | /0 | ISP | スタティック | — |
| 10.0.0.0 | /8 | 本社 | OSPF | — |
| 10.1.0.0 | /16 | 支社A | OSPF | — |
| 10.1.2.0 | /24 | 支社A-2F | スタティック | — |
| 172.16.0.0 | /16 | DC | OSPF | — |
| 192.168.1.0 | /24 | Connected | 直結 | — |
採用された経路(最長一致)
—
💡 /24 は /8 より具体的なので勝つ——プレフィックス長が長いほど「範囲が狭く、より正確に宛先を言い当てている」経路とみなされます。ルータは一致するすべての行の中から、この最も具体的な行を選びます。
| 情報源 | AD値 |
|---|---|
| 直結 | 0 |
| スタティック | 1 |
| OSPF | 110 |
| RIP | 120 |
AD値は「その情報源をどれだけ信頼するか」の目安。数字が小さいほど信頼度が高いため優先されます(直結 0 が最強、スタティック 1、OSPF 110、RIP 120 の順)。
例:10.1.2.0/24 という同じプレフィックス・同じ長さを、スタティックとOSPFの両方が知っていたら?
| 宛先ネットワーク | 情報源 | AD値 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 10.1.2.0/24 | スタティック | 1 | — |
| 10.1.2.0/24 | OSPF | 110 | — |
そもそもルーティングとは
宛先ごとに「次はどこへ渡すか」を決める、道案内。
ルーティング(routing)は、パケット(細かく分けたデータ)を目的のコンピューターまで届けるために、次にどのルーターへ渡すかを選ぶ仕組みです。ルーターは「ルーティングテーブル(経路表)」という表を持っていて、宛先のIPアドレスに合う行を探して、渡し先を決めます。
たとえるなら、荷物の仕分け所です。宛先の住所を見て「この町内ならこちらの棚、それ以外は大きな集配所へ」と振り分けます。荷物が届くまでに、こうした仕分けを何か所も経由しますが、各ルーターが考えるのは「次の一手」だけです。
どこで・どんな場面で使うか
-
家庭のルーター
パソコンやスマホの通信を、家の中かインターネットかに振り分けます。外向けの通信はまとめてプロバイダへ送ります。
-
会社の拠点間をつなぐとき
本社と支社のネットワークをつなぐ場合、「あちらの宛先はこのルーターへ」と経路を教えておく必要があります。
-
インターネットの中
プロバイダや大きな事業者のルーターどうしが、経路の情報を交換しながら世界中への道筋を保っています。
-
クラウドのネットワーク設定
AWS などの仮想ネットワークにも「ルートテーブル」があり、どの宛先をどこへ向けるかを自分で設定します。
-
資格試験
CCNA では出題の中心になるテーマで、基本情報技術者試験のネットワーク分野にも出てきます。
知らないと何が困るか
- 「届かない」の原因を絞れない。通信が通らないとき、経路の不足なのか、機器の故障なのかを切り分けられません。経路表を見る習慣が、原因探しの近道になります。
- 設定の意味が分からないまま写してしまう。ルーターやクラウドの設定画面にある「宛先」「ネクストホップ(次の渡し先)」という欄を読めると、設定ミスに自分で気づけます。
- ネットワークの全体像がつかめない。「通信は一つ一つのルーターが次の渡し先を選んでつないでいる」と分かると、他のネットワークの話も理解しやすくなります。
上のツールで宛先IPを入れて、経路表のどの行が選ばれるかを確かめてみてください。
スタティックと動的・3つの理解
手で書くか、自動で学ぶか。行き先が分からなければ、ひとまずISPへ。
- 1
スタティックルート=手で書く、OSPF=リンク状態を交換して自動で学ぶ
スタティックルートは管理者が1行ずつ設定する経路。小規模で経路が変わらないネットワーク向きで、AD値が低く(1)優先されやすい反面、回線障害があっても自動では迂回してくれません。OSPFはルータ同士が「リンク状態(つながり方)」の情報を交換し合い、最適な経路を自動計算するダイナミックルーティング。トポロジが変わっても自動で経路を学び直します。
- 2
デフォルトルート「0.0.0.0/0」=行き先が分からなければISPへ
ルーティングテーブルのどの行にも一致しない宛先(例:8.8.8.8 のようなインターネット上のアドレス)は、最終手段として 0.0.0.0/0(デフォルトルート)に流されます。プレフィックス長が0=「どんなIPにも一致するが、最も曖昧な行」なので、他に具体的な一致がなければ必ずこれが最長一致になり、ISP方向へ送られます。
- 3
ありがちな失敗:片道ルーティングとデフォルトルート忘れ
①戻りの経路がない「片道ルーティング」——行きのルータには経路を書いたのに、戻り側のルータに宛先への経路を書き忘れると、パケットは届いても応答が返らず「繋がらない」ように見えます。通信は往復(行き+帰り)で経路が要ることを忘れずに。
②デフォルトルートの書き忘れ——自社ネットワーク宛の経路だけ書いて満足すると、インターネットなど「テーブルにない宛先」への通信がすべて失敗します。エッジルータには必ずデフォルトルートを。
ルーティング(最長一致・AD値・スタティック/ダイナミック)は CCNA 出題範囲「IP Connectivity」の中心テーマで、6分野中もっとも配点比率が高い領域のひとつです。計算はすべてあなたのブラウザの中(純JavaScript)で完結し、入力はサーバへ送信されません(送信ゼロ)。
📘 CCNA ではここが問われる(200-301 v1.1・IP Connectivity)
- ルーティングテーブルの読み方:経路の種類のコード(C 直結・L 自分のアドレス・S スタティック・O OSPF)、プレフィックス、次のホップ、AD/メトリック、ラストリゾート(デフォルトルート)
- 経路選択の順番:1. 最長一致(プレフィックス長が長いほうが優先)、2. AD(管理距離)が小さいほう、3. 同じ種類の中ではメトリックが小さいほう
- AD の既定値:直結 0・スタティック 1・eBGP 20・EIGRP(内部)90・OSPF 110・IS-IS 115・RIP 120
- スタティックルートの設定:
ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 10.0.0.2。デフォルトルートはip route 0.0.0.0 0.0.0.0 10.0.0.2。AD を大きくした「フローティングスタティック」は予備の経路になります - IPv6 も同様:
ipv6 route 2001:db8:2::/64 2001:db8:1::2。確認はshow ip route
ルーターが自動で経路を覚える仕組みは OSPF や BGP で。ルーターを二重化するなら HSRP。宛先までの道のりを実際にたどるのは traceroute。アドレスの区切りは サブネット で。
たとえると
ルーターは、交差点の道案内の看板のようなものです。「この町なら右、あの町なら左、それ以外は大きな幹線道路へ」と書いてあり、荷物(パケット)の宛先を見て、いちばん詳しく書いてある看板に従います。看板が同じ詳しさで複数あれば、信頼できる出どころ(スタティックや OSPF など)のほうを選びます。
このツールは、ネットワーク全体図のここ
- 自分の端末
- 家・会社の中
- 出入口
- 建物の外
- 相手のサーバー
- データセンター
- 見る・動かす
建物の出入口(ルーター)— ルーターが「この宛先はどの道へ送るか」の地図(ルーティングテーブル)を使う話です。
建物の出入口は、会社の受付と郵便の仕分け係のような場所です。OSI では第3層(ネットワーク)。
このページに出てくる略語(9語)
- WAN (Wide Area Network) — 建物の外へ広がる、遠く離れた拠点をつなぐネットワーク
- MAN (Metropolitan Area Network) — 市や地域の広さで、複数の建物をつなぐネットワーク
- AD (Administrative Distance) — 同じ宛先の道を複数の方法で教わったとき、どれを信じるかの優先度
- RIB (Routing Information Base) — ルーターが覚えている、宛先ごとの道の一覧(ルーティングテーブル)
- FIB (Forwarding Information Base) — RIB から作る、荷物を高速に転送するための表
- ECMP (Equal-Cost Multi-Path) — 同じ値打ちの道が複数あるとき、荷物を振り分けて使う仕組み
- RIP (Routing Information Protocol) — 中継の数(ホップ数)だけで道を選ぶ、昔ながらのルーティングの決まりごと
- EIGRP (Enhanced Interior Gateway Routing Protocol) — Cisco 発の、社内向けのルーティングの決まりごと
- L3 (Layer 3) — OSI の第3層(ネットワーク層)。IP アドレスで道を選ぶ話
このツールについて
宛先IPを1つ入れると、ルータが持つ複数の経路情報の中から『どの行が採用されるか』を、照合の過程ごと見せます。ルーティングの核心は最長一致(ロンゲストマッチ)。/24 は /8 より具体的だから勝つ——その理屈を目で確認できます。入力はこの端末から一切出ません(送信ゼロ)。
宛先IPを入れると最長一致(ロンゲストマッチ)で選ばれる行が光る。/24は/8より具体的だから勝つ。AD値(直結0/スタティック1/OSPF110)の優先順位も体験。
🔰 かんたんに言うと
郵便局の仕分けと同じで、宛先に「いちばん詳しく当てはまる行き先メモ」を選んで転送します。そのメモの選ばれ方が見えるページです。
主な機能
- 固定6行のルーティングテーブルに対する最長一致の照合過程を可視化
- 4つのプリセット宛先IPで即体験
- AD値早見表+同一プレフィックス間の競合体験
- スタティック/OSPFの違いとデフォルトルートの意味
- 片道ルーティング等ありがち失敗の解説
- 送信ゼロ(全てブラウザ内計算)
よくある質問
Q. 「最長一致(ロンゲストマッチ)」とは何ですか?
A. 宛先IPが複数の経路に一致する場合、プレフィックス長が最も長い(=最も具体的な)経路が優先されるルーティングの基本ルールです。10.1.2.5宛は/8にも/16にも/24にも一致しますが、最も具体的な/24が選ばれます。
Q. なぜ/24は/8より優先されるのですか?
A. プレフィックス長が長いほど範囲が狭く、宛先をより正確に言い当てているためです。/8は1600万個超のアドレスを含む広い範囲、/24は256個だけの狭い範囲=より的確な情報として扱われます。
Q. AD値(アドミニストレーティブディスタンス)とは?
A. 経路の「情報源をどれだけ信頼するか」の数値です。小さいほど優先され、直結(0)>スタティック(1)>OSPF(110)>RIP(120)の順です。プレフィックス長が同じ場合にのみ比較されます。
Q. 最長一致とAD値、どちらが先ですか?
A. 最長一致が最優先です。プレフィックス長が異なる経路同士はADに関係なく長い方が勝ちます。ADは長さが同じときの次点の判断基準です。
Q. スタティックルートとOSPFの違いは?
A. スタティックは管理者が手で書く経路でシンプルですが変化に自動対応しません。OSPFはルータ同士が情報交換して自動計算する動的ルーティングで、障害時も経路を学び直します。
Q. デフォルトルート(0.0.0.0/0)は何のため?
A. どの行にも一致しない宛先を送る「最終手段」です。すべてのIPに一致しますが最も曖昧なので、他に一致がないときだけ選ばれます。書き忘れると外部への通信が全滅します。
Q. つながらないとき、ルーティングで多い原因は?
A. ①戻りの経路がない「片道ルーティング」(行きは届くが応答が帰れない)②デフォルトルートの書き忘れ、が代表です。通信には行きと帰りの両方の経路が必要です。
入力値はURLの「#」以降に入るためサーバーには送信されません。リンクを開くと同じ状態を復元します。
続けて整える
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