ネットワークを整える
専門スパニングツリーを整える。
= ループを見つけて1本を自動で止める、スイッチの安全装置
ネットワークのどこの話? 家や会社の中(LAN)で、スイッチ同士を何本もつないだときに起きる「ループ」を防ぐ話です。OSI 参照モデルの第2層(データリンク層)にあたります(OSI参照モデル)。
STP が初めての方は、先に そもそも STP とは・どんな場面で使うか をどうぞ。
アニメで見る — STPがループを止めるまで 開くと1ステップずつ動きます
SW1
スイッチ
SW2
スイッチ
SW3
スイッチ
STEP 1
※ イメージ図です。下の「①ループの怖さ」「②選出とブロック」で実際に動かして確かめられます。
① ループの怖さを10秒で
スイッチ3台を三角形につなぐと、1つのブロードキャストフレームが3台をぐるぐる回り続け、複製されながら増えていきます。これが『ブロードキャストストーム』です。
「▶ ループを起こす」を押すと、SW1が送信した1つのブロードキャストフレームが、3台の間を回り続けながら複製されていく様子が見られます。
② ルートブリッジ選出とブロック
各スイッチの『プライオリティ』を変えると、ブリッジID(プライオリティ+MACアドレス)が最小のスイッチが『ルートブリッジ』に選ばれます。全リンクが同速度(等コスト)の前提で、ルートから見て遠い側の1リンクが自動的にブロックされます。
MAC: aa:bb:cc:00:00:01
MAC: aa:bb:cc:00:00:02
MAC: aa:bb:cc:00:00:03
💡 数値が小さいほど「えらい」(優先される)扱いです。同点の場合はMACアドレスが小さいほうが勝ちます。「わざとpriorityを下げる」のは「このスイッチをルートブリッジにしたい」という実務上の意思表示です(コアスイッチを意図的にルートへ)。
👑 ルートブリッジに選ばれたのは
—
BID: —
🚫 ブロックされるリンクとポート
—
—
- 計算中…
そもそも STP とは
スイッチの配線にできた「輪」を、自動で一本道に直す仕組み。
STP(Spanning Tree Protocol・スパニングツリープロトコル)は、スイッチどうしを複数の線でつないだときにできる、ぐるぐる回る輪(ループ)を防ぐ仕組みです。輪があると、同じデータが回り続けてネットワーク全体が止まってしまいます。
ネットワークは、1本の線が切れても使えるように、わざと配線を余分に引くことがあります。STP は、余分な線を普段は「通行止め」にしておき、使っている線が切れたときに通行止めを解除します。
どこで・どんな場面で使うか
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オフィスのスイッチの二重化
フロアのスイッチを、上位のスイッチ2台に別々の線でつなぎます。
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ケーブルの挿し間違い
会議室のスイッチに、同じスイッチの2か所を線でつないでしまい、輪ができる失敗が実際にあります。
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サーバー室・データセンター
故障に備えた二重配線を、輪にならないように保ちます。
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機器の初期設定
多くのスイッチでは、最初から STP が有効になっています。
-
資格試験
CCNA・ネットワークスペシャリスト試験の定番分野です。
知らないと何が困るか
- ネットワーク全体が突然止まる理由が分からない。ループが原因だと、1か所のつなぎ間違いでも全体が止まります。
- 二重化した線が「使われていない」ことに驚く。通行止めになっている線は、正常な状態です。故障だと勘違いして直そうとすると、かえって危険です。
- 切り替えに時間がかかると知らない。従来の STP では、線が切れてから通信が戻るまで数十秒かかります。
上の「ループの怖さ」の体験で、輪ができるとどうなるのか、STP が防ぐ様子を確かめてみてください。
③ ポートの状態と現代のSTP
ブロックされなかったポートも、いきなり通信できるわけではありません。従来のSTP(IEEE 802.1D)は4段階を順に踏み、合計で約30〜50秒かかります。RSTP(IEEE 802.1w)はこれを大幅に短縮します。
Blocking(ブロッキング)
最大20秒(Max Age待ち)
フレームを転送しない。BPDU(STPの制御フレーム)だけは受信して監視する。ループを断つための「待機」状態。
Listening(リスニング)
15秒(Forward Delay)
BPDUの送受信を始め、自分がルートポート/指定ポートになるかを判断する。まだユーザーのフレームは転送しない。
Learning(ラーニング)
15秒(Forward Delay)
送信元MACアドレスの学習(MACアドレステーブルの構築)を始める。まだフレームは転送しない。
Forwarding(フォワーディング)
(遷移完了・以降継続)
通常どおりフレームを送受信する、本来の状態。ここまで来て初めて通信できる。
状態を2つに整理
Listening/Learningのような「待つだけ」の中間状態をなくし、実質 Discarding(破棄)→Learning→Forwarding に整理。無駄な待ち時間を減らした。
Proposal / Agreement(提案・合意)
隣のスイッチ同士がBPDUで「私がこのリンクの指定ポートになってよいか」を提案し合い、即座に合意を返す仕組み。Max Age(20秒)のタイムアウトを待たずに、数秒でフォワーディングへ遷移できる。
Alternate / Backup Port
代替ポートの情報をあらかじめ把握しておくため、リンク障害時もタイムアウト待ちなしですぐ切り替えられる。
現在のスイッチはほぼすべてRSTP(またはRSTPベースのMSTP)で動作しており、リンク障害時も数秒でフォワーディングに復帰します。
⚠️ ありがちな失敗
- 古いスイッチを勝手に繋いだら、ルートが乗っ取られた。 誰かが自宅の安いスイッチ(priorityが既定値32768のまま)を空きポートに繋いだだけで、そのスイッチのMACアドレスが既存のルートより小さければ、意図せずルートブリッジが交代してしまうことがあります。トポロジ全体が再収束し、一時的に通信が止まることも。 防御策としてroot guard(指定したポートの先から、より優れたBPDUが来ても無視してルートに昇格させない機能)を、ルートにしたくない方向のポートに設定しておくのが定石です。
- 「ループさせなければSTPは要らない」は誤解。 設計時にループが無くても、配線ミスや増設、災害復旧時の仮配線などで意図せずループができることがあります。STPは「保険」として、複数の冗長リンクを持つネットワークでは基本的に有効化しておくべき機能です。
📘 CCNA『Network Access』範囲の基礎です。実際のSTPは、コストの異なる複数リンクや複数スイッチが混在するより複雑なトポロジでも、各ポートごとに Root Port / Designated Port / Blocking Port の役割を「ルートからのコスト → 送信元BID → 送信元ポートID」の順で決定します。本ページは全リンクが等コストの三角形という単純化した教材モデルで、選出の考え方だけを扱っています。
📘 CCNA ではここが問われる(200-301 v1.1・Network Access)
- 試験で中心になるのは Rapid PVST+(RSTP)の基本動作。ルートブリッジ・ルートポート・指定ポート・代替ポート(ブロック中)の役割を読み取れること
- ルートブリッジはブリッジ ID(プライオリティ+MAC アドレス)がいちばん小さいスイッチ。プライオリティの既定は 32768(VLAN ID が加わり 4096 刻み)
- Cisco Catalyst の既定のモードは PVST+(VLAN ごとに木を作る)。
spanning-tree mode rapid-pvstで Rapid PVST+ に変えます - 従来の STP のタイマーの既定は hello 2 秒・max age 20 秒・forward delay 15 秒。ブロックから転送まで約 30〜50 秒かかり、RSTP ではこれが数秒に縮まります
- PortFast(端末用ポートをすぐ転送に)と BPDU ガード(PortFast のポートに BPDU が来たらシャットダウン):
spanning-tree portfast/spanning-tree bpduguard enable - ルートの指定と確認:
spanning-tree vlan 10 root primary・show spanning-tree
このページは全リンクが同じ速さの三角形の例です。実機ではリンクの速さでコストが変わります。リンクを束ねる EtherChannel は STP からは1本に見えます。VLAN の分け方は VLAN、機器同士の見つけ方は CDP・LLDP で。
たとえると
道路が輪っか状につながっていて、しかも全部の交差点が「来た車を全方向へ複製して流す」ルールだったら、同じ車が増えながら永遠に走り続けます。STP は、町でいちばん偉い交差点(ルートブリッジ)を決め、輪を作ってしまう道を1本だけ通行止めにして、車が回り続けないようにします。通行止めの道は、本線が通れなくなったときの予備にもなります。
このツールは、ネットワーク全体図のここ
- 自分の端末
- 家・会社の中
- 出入口
- 建物の外
- 相手のサーバー
- データセンター
- 見る・動かす
家・会社の中(LAN)— スイッチ同士をつなぐ線が輪になって通信が回り続けるのを防ぐ話です。
家・会社の中は、同じ建物の中の廊下と部屋割りのような場所です。OSI では第2層(データリンク)。
このページに出てくる略語(9語)
- STP (Spanning Tree Protocol) — スイッチの線が輪になっても通信が回り続けないよう、一部の道を止める決まりごと
- RSTP (Rapid Spanning Tree Protocol) — STP を速く切り替わるようにした改良版
- PVST+ (Per-VLAN Spanning Tree Plus) — VLAN ごとに別々の STP を動かす、Cisco 独自の方式
- Rapid PVST+ (Rapid Per-VLAN Spanning Tree Plus) — PVST+ を RSTP の速さで動かす Cisco の方式
- MSTP (Multiple Spanning Tree Protocol) — 複数の VLAN をまとめて数個の STP で動かす方式
- BPDU (Bridge Protocol Data Unit) — STP でスイッチ同士が交換する、状況を伝えるメッセージ
- BID (Bridge ID) — STP で各スイッチに付く番号。いちばん小さいスイッチが親(ルート)になる
- 802.1D (IEEE 802.1D) — 元の STP(スパニングツリー)を定めた規格
- 802.1w (IEEE 802.1w) — RSTP(高速版のスパニングツリー)を定めた規格
このツールについて
スイッチを三角形につなぐと、フレームがぐるぐる回り続ける『ループ』ができてしまいます。STP(スパニングツリープロトコル)は、いちばん『えらい』スイッチ(ルートブリッジ)を選び、ループを閉じている1本のリンクだけを自動でブロックすることで、これを防ぎます。その選出とブロックの過程を、手を動かしながら確かめられます(送信ゼロ)。
スイッチの輪っかはブロードキャストストームの元。STPが1本を自動でブロックして守る。プライオリティを変えるとルートブリッジとブロック位置が変わるのが見える。
🔰 かんたんに言うと
スイッチの配線が輪っかになると通信が洪水のように増えて麻痺します。それを防ぐために1本を自動でお休みさせる仕組みです。
主な機能
- 三角形3台構成でループの増殖を簡易アニメ(reduced-motion対応)
- プライオリティ変更→最小BIDのルートブリッジ選出が光る
- ブロックポートが決まる過程を段階表示(等コスト簡略モデル)
- Blocking→Forwardingのポート状態遷移とRSTPの概要
- root guard等の防御の一言つき
- すべてブラウザ内・送信ゼロ
よくある質問
Q. スパニングツリー(STP)とは何ですか?
A. スイッチ同士の配線がループ(輪)になったとき、1本のリンクを自動でブロックしてループを断つ仕組みです。冗長な配線の安全装置です。
Q. なぜループがそんなに怖いのですか?
A. L2のフレームにはTTL(寿命)がなく、ブロードキャストがループを回り続けて増殖し(ブロードキャストストーム)、ネットワーク全体が数秒で麻痺するからです。
Q. ルートブリッジはどう決まりますか?
A. 各スイッチのブリッジID(プライオリティ+MACアドレス)が最も小さいものが選ばれます。プライオリティが同じならMACアドレスの小さい方=意図しない古いスイッチが勝つことも。
Q. ルートブリッジを自分で決めたいときは?
A. 基幹スイッチのプライオリティを下げます(例: 32768→4096)。「この子をルートにしたい」という管理者の意思表示です。
Q. RSTPは何が違うのですか?
A. 従来のSTPは切替に30〜50秒かかりましたが、RSTPは提案と合意のやり取りで数秒に短縮した高速版です。現在の主流はRSTP系です。
Q. このページのモデルは実物と同じですか?
A. 等コストの三角形に簡略化した教材モデルです。実際のポート役割の決定はコストやポートIDも絡んでより複雑ですが、「最小BIDがルート」「1か所ブロック」の本質は同じです。
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