契約書の新旧どこが変わった?──差分の読み方とPDFの比べ方
契約書を修正して戻されたとき、どこが変わったかを目で追うのは危険です。差分表示の色の読み方、Wordの比較機能とテキスト比較・PDF比較ツールの使い分け、全角半角の違いに惑わされない設定、契約書で見落としやすい変更箇所、比較しても端末の外に文書を出さない確かめ方まで整理します。
この記事のポイント
- 比べられる範囲は、テキスト比較が2つの文章、PDF比較が先頭3,000行
- PDF比較は文字の並びだけを見る。レイアウトと画像の違いは出ない
- 「テキスト比較」と「PDFの比較」で端末内だけで差分を出せる
- Q.
- 契約書の新旧の違いは、どうやって確かめればよいですか?
- A.
- 変更前と変更後を比較ツールにかけ、追加と削除の行を色分けで確かめるのが確実です。Wordの文書ならWordの比較機能、PDFならPDF比較、文章を貼り付けるならテキスト比較が使えます。ツールは違いを示すだけなので、変更が妥当かどうかは人が読んで判断します。
契約書の修正版が相手から戻ってきた。依頼した箇所は直っているが、ほかの条文にも手が入っていないか。全体を読み直すのは時間がかかり、しかも人の目は「変わっていないはず」の箇所を読み飛ばします。
結論を先に書きます。
新旧の違いを確かめるときは、変更前と変更後を比較ツールにかけて、追加された行と削除された行を色分けで見るのが確実です。文書の形式によって道具が分かれ、Word形式ならWordの比較機能、PDFならPDF比較、文章を貼り付けられるならテキスト比較が使えます。 ただし、ツールが示すのは「違い」までです。その変更が妥当かどうかは、人が読んで決めます。
差分表示の読み方
差分表示では、次の色分けが基本になります。
| 表示 | 意味 | 見るべきこと |
|---|---|---|
| 緑(追加) | 新しい版にだけある行 | 頼んでいない文言が増えていないか |
| 赤(削除) | 古い版にだけある行 | 残すはずの条文が消えていないか |
| 色なし(変更なし) | 両方に同じ行がある | 読み飛ばしてよい行 |
行の中のごく一部だけが変わった場合は、行全体を赤と緑で見せたうえで、変わった文字だけを濃い色で示す方式があります。たとえば「甲は乙に対し、毎月末日までに支払う」が「毎月15日までに」に変わったとき、「末日」と「15日」の部分だけが濃くなれば、行全体を読み比べなくても金額や期日の変更に気づけます。
見落としやすい変更
契約書の差分で、特に目を止めたいのは次のような箇所です。
- 金額・期日・期間などの数字(「30日」が「60日」に変わるなど)
- 「および」「または」「かつ」の入れ替え(条件の範囲が変わる)
- 「できる」と「しなければならない」の違い(権利か義務か)
- 定義語の変更(「本製品」の範囲が広がるなど)
- 条番号の繰り下げ(条文を足すと、ほかの条文の引用先がずれる)
差分では、これらがすべて「1行の変更」として現れます。変更行を上から順に読み、「この変更は、依頼したことに入っているか」を1行ずつ確かめます。依頼していない変更が見つかったら、その行を相手に問い合わせます。
3つの道具の使い分け
| 手元の文書 | 向いている道具 | 理由 |
|---|---|---|
| 両方がWord(.docx) | Wordの比較機能 | 結果が変更履歴として残り、そのまま確認できる |
| 契約書の本文を貼り付けられる | テキスト比較 | 行と文字の両方で色分けでき、空白や全角半角の差を無視できる |
| 両方がPDF | PDFの比較 | ファイルのまま、追加・削除・変更なしの行数がわかる |
Wordの比較機能
Wordには、2つの版を比較する機能があります。Microsoftのサポート情報によると、「校閲」タブの「比較」から「ドキュメントの2つのバージョンを比較する(法的ブラックライン)」を選び、「元の文書」と「変更された文書」を指定します。結果は新しい3つめの文書として作られ、元の文書の変更履歴は承認された状態になり、変更された文書の変更が変更履歴として表示されます。
両方がWordで届いているなら、まずこれを使うのが自然です。結果が変更履歴の形で残り、Wordの中で変更を順に確認できるためです。
テキスト比較ツール
Wordの文書が手元になく、PDFから文章をコピーしただけ、メール本文に条文が書かれていた、というときは、テキスト比較を整えるが使えます。変更前と変更後の文章を2つの欄に貼ると、行単位で追加(緑)と削除(赤)を示し、変更のあった行は変わった文字だけを濃く示します。日本語は単語の区切りがないため、文字単位で比べる設計です。
オプションは3つあります。
- 空白の違いを無視
- 大文字・小文字を無視
- 全角・半角を無視
これらは違いを判定するときだけに使われ、表示される文章は入力した原文のままです。PDFからコピーした文章は、全角と半角の数字が混ざったり、空白の位置が変わったりしがちです。その差が大量の「変更行」として出てしまうとき、オプションをかけると本当の変更だけが残ります。ただし、契約書では「1,000」と「1,000」の違いも見たい場合があるので、最初はオプションなしで比べ、ノイズが多いときだけ使う順番をおすすめします。
制限もあります。Word(.docx)やPDFのファイルを直接読み込むことはできません。入力の上限は合計2MB、または片方の文章が50,000行までです。比べられるのは2つの文章までで、3つ以上の版を一度に並べることはできません。また、1行が1,000文字を超える行は、行の色分けはしますが、変わった文字だけを濃くする表示は省かれます。
PDFの比較ツール
押印後のPDFや、相手が送ってきたPDFしか手元にないときは、PDFの比較を整えるを使います。変更前と変更後のPDFを選んで「比較する」を押すと、追加された行、削除された行、変更なしの行が色分けされ、それぞれの行数も出ます。「変更なし行を隠す」にチェックを入れると、変更行だけを順に追えます。
このツールの仕様で、知っておきたい点が3つあります。
- 文字の並びで比べます。レイアウト、画像、押印の位置などの違いは検出しません
- 画像だけのPDF(スキャンした紙など)は比べられません
- パスワード付き(暗号化)のPDFは扱えないので、解除してから使います
行数が3,000行を超える場合は、先頭の3,000行までを比べる仕様です。長い契約書を比べるときは、画面に「先頭3000行までを比較しました」という注記が出ていないかを見ます。出ていたら、後半が比べられていません。
契約書を端末の外に出さない
契約書は、取引条件や相手方の名前など、外に出したくない情報を含みます。オンラインの比較サービスには、入力した文章やファイルをサーバーに送って処理するものもあります。
このサイトの2つのツールは、比較の処理をブラウザの中だけで行い、文章やPDFを送信しません。信じなくても確かめられます。ブラウザの開発者ツールで「ネットワーク」タブを開いたまま比較し、通信が出ていないことを見る方法です。契約書のように外へ出しにくい文書は、この確認方法で通信の有無を自分の目で確かめてから使えます。
差分を使った確認の流れ
- 自分が最後に送った版(変更前)と、戻ってきた版(変更後)を用意する
- 形式に合わせて、Word比較・テキスト比較・PDF比較のどれかを選ぶ
- 変更行を上から順に読み、依頼した変更かどうかを1行ずつ照らす
- 依頼していない変更は、そのまま通さず相手に確認する
- 最後に、数字と日付だけをもう一度見直す
3の「依頼した変更かどうか」を確かめるには、依頼のメールや打ち合わせのメモを横に置いて読みます。差分は「何が変わったか」を示すだけで、「何を変えるはずだったか」は自分で持っている必要があります。
まとめ
- 追加は緑、削除は赤。変更行を1行ずつ読み、依頼した変更かを確かめる
- Word同士ならWordの比較、文章ならテキスト比較を整える、PDF同士ならPDFの比較を整える
- PDF比較は文字の並びだけを見る。レイアウトと画像、画像だけのPDFは対象外
- 全角半角や空白の差は、オプションで無視できるが、契約書では最初はオプションなしで比べる
- 差分は違いを示すだけ。妥当かどうかは人が判断する