天気予報の「平年並み」の平年とは?──30年平均と10年ごとの更新
気象庁の平年値は、西暦の1の位が1の年から続く30年間の平均で、10年ごとに更新されます。現在は1991〜2020年の値で、2021年5月19日から使われています。「平年並」という言葉との違いと、東京・札幌・那覇の平年値の数字で整理します。
この記事のポイント
- 平年値は30年間の平均。現在は1991〜2020年で、次は2031年に更新される
- 平年値と「平年並」は別物。平年並は30年の11〜20番目で、各階級が33%
- 47都道府県の平年値は天候の平年値を整えるで比べられる
- Q.
- 天気予報でいう「平年」とは、何年から何年までの平均ですか?
- A.
- 現在は1991年から2020年までの30年間の平均です。気象庁は西暦の1の位が1の年から続く30年間の平均を平年値とし、10年ごとに更新していて、2021年5月19日から使い始めました。次の更新は2031年で、2001〜2030年の値になります。
天気予報や季節の便りで、「今年の9月は平年より暑い」「降水量は平年並み」と聞きます。この「平年」が、何年から何年までの平均なのかを、はっきり答えられる人は多くありません。
結論を先に書きます。気象庁の平年値は、西暦の1の位が1の年から続く30年間の平均で、10年ごとに更新されます。現在使われているのは1991〜2020年の値で、2021年5月19日に使い始めました。 次の更新は2031年で、2001〜2030年の値になります。また、天気予報でよく聞く「平年並」は、平年値そのものではなく、季節予報で使う別の言葉です。この記事では、気象庁の公表資料と、天候の平年値のデータをもとに、2つの違いを整理します。
平年値とは:30年平均を10年ごとに更新する
気象庁は、平年値を「西暦年の1の位が1の年から続く30年間の平均値」と定め、10年ごとに更新しています。2021年3月24日の報道発表によると、1991〜2020年の観測値による新しい平年値を作成し、2021年5月19日から使い始めました。その前は、1981〜2010年の平年値でした。更新は2011年以来、10年ぶりでした。
この「30年を平均して、10年ごとに更新する」というやり方は、世界気象機関(WMO)が推奨している方法に沿ったものです。気象庁の季節予報の研修テキストにも、そう書かれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 現在の平年値 | 1991〜2020年の30年平均 |
| 使用開始日 | 2021年5月19日 |
| 1つ前の平年値 | 1981〜2010年(2011年から使用) |
| 更新の周期 | 10年ごと |
| 次の更新 | 2031年(2001〜2030年の値) |
平年値は、その時々の気温や降水量、日照時間などを評価する基準として使われます。「冷夏」「暖冬」「少雨」「多雨」といった言葉も、平年値と比べて決まります。
東京・札幌・那覇の平年値を見てみる
平年値が具体的にどんな数字なのか、データで見てみます。天候の平年値のデータは、1991〜2020年の値を、各都道府県の地方気象台などの観測地点ごとにまとめたものです。
| 観測地点 | 年平均気温 | 年降水量 | 年間日照時間 |
|---|---|---|---|
| 札幌 | 9.2℃ | 1,146.1mm | 1,718.0時間 |
| 東京 | 15.8℃ | 1,598.2mm | 1,926.7時間 |
| 那覇 | 23.3℃ | 2,161.0mm | 1,727.1時間 |
年平均気温は、47地点のうち、那覇が最も高い23.3℃、札幌が最も低い9.2℃で、差は14.1℃あります。年降水量は那覇が2,161.0mmで、札幌の約1.9倍です。
月ごとにも平年値があります。東京の月平均気温の平年値は、8月が26.9℃、9月が23.3℃、10月が18.0℃です。8月から9月にかけて3.6℃、9月から10月にかけて5.3℃下がります。月平均で見ても、9月から10月にかけてのほうが、下がり幅が大きくなります。降水量は、東京の9月が224.9mm、10月が234.8mmで、年間の12か月の中で多い2か月です。
平年値との差は、「平年差」と呼ばれます。たとえば、東京のある年の9月の平均気温が25.3℃だったとします。平年値は23.3℃なので、平年差は+2.0℃です。ニュースで「平年より2.0℃高い」と言われるのは、この計算です。
更新で何が変わったか
気象庁の発表によると、2021年の更新で、次のような変化がありました。
- 年平均気温は、全国的に、1つ前の平年値より0.1〜0.5℃程度高くなった
- 降水量は、夏の西日本や、秋と冬の太平洋側の多くの地点で、10%程度多くなった
- さくらの開花日は、ほとんどの気象官署で1〜2日早くなった
気温が高くなった背景について、気象庁は、日本の平均気温が長期的に上昇していて、1980年代後半から急速に上がっていることを挙げています。新しい平年値では、1981〜1990年の10年が外れ、2011〜2020年の10年が加わっています。
ここから、読み方の注意が出てきます。「平年より暑い」の「平年」は、年代によって基準が違います。 2021年4月までのニュースの「平年」と、2021年5月以降の「平年」は、基準の期間が違います。昔の記事や本の「平年値」の数字を、今の平年値と並べて比べるときは、どの期間の平年値かを確かめる必要があります。
「平年並」は平年値とは別の言葉
季節予報では、気温や降水量を「低い(少ない)」「平年並」「高い(多い)」の3つの階級で予報します。この「平年並」は、平年値と同じ値という意味ではなく、一定の幅のある範囲を指します。
気象庁の説明では、3つの階級は次のように決められています。
- 1991〜2020年の30年間の値を、小さいほうから順に並べる
- 11番目から20番目までの範囲を「平年並」とする
- それより低ければ「低い(少ない)」、高ければ「高い(多い)」とする
こう決めると、過去30年の値では、3つの階級がそれぞれ10回ずつ出ます。出現率は、どの階級も約33%で等しくなります。予測の材料が何もなければ、3つの階級の確率はすべて33%ずつです。
| 言葉 | 意味 | 値の種類 |
|---|---|---|
| 平年値 | 30年間の平均 | 1つの数値 |
| 平年差 | 観測値から平年値を引いた差 | 1つの数値 |
| 平年並 | 30年の11〜20番目に入る範囲 | 幅のある範囲 |
「平年並」の範囲は、地方や予報の対象期間ごとに違います。平年値の前後に同じ幅があるわけではなく、地域や季節によって決まります。ですから、平年値がぴったり同じ値でなくても「平年並」に入ります。
数字を使うときの注意点
平年値を資料や文章で使うとき、迷いやすい点を整理します。
- 期間を書く。 「平年値」とだけ書かず、「1991〜2020年の平年値」と添えます。次の更新で値が変わるためです
- 観測地点を確かめる。 都道府県の代表として、地方気象台などの観測地点が使われています。埼玉県は熊谷、滋賀県は彦根の観測地点で、県全体の平均ではありません
- 予想ではない。 平年値は過去30年の平均で、今年の天気の予想ではありません
- 月ごとの値と年間の値を区別する。 気温は平均、降水量や日照時間は合計の値です
47都道府県の平年値を比べる
天候の平年値を整える は、気象庁の1991〜2020年の平年値をもとに、47都道府県の年平均気温、降水量、日照時間などのランキングを一覧できます。今月の平年値も確かめられます。数字は気象庁の公表値のままで、順位づけだけを当サイトで行っています。天気予報ではなく、基準になる「平年」の値を知るための道具です。
出典
- 気象庁「平年値の更新について」(2021年3月24日報道発表)
- 気象庁「季節予報って何? 3つの階級について」
- 気象庁 令和3年度季節予報研修テキスト「2020年平年値」
- 気象庁「過去の気象データ検索」平年値(1991〜2020年)