「のし紙」と「掛け紙」は別物──慶事と弔事で紙を間違えない見分け方
弔事の袋も「のし袋」と呼ばれがちですが、のしは慶事だけの飾りで、弔事に使う紙は正しくは掛け紙といいます。両者の見分け方と、お見舞い・快気祝いなど間違えやすい場面を整理します。
この記事のポイント
- のし紙は慶事だけの紙で、弔事に使う紙は掛け紙と呼ぶのが正しい
- お見舞いはのしなしの掛け紙、快気祝いはのし付きで扱いが逆になる
- 「のし・表書きを整える」で約25の用途から、のしの要不要と水引が分かる
- Q.
- のし紙と掛け紙の違いは?
- A.
- 紙面の右上に熨斗の飾りがあるのがのし紙で、慶事だけに使います。弔事に使う紙は飾りがなく水引だけが印刷されたもので、掛け紙と呼びます。のしは長寿を願う慶事の縁起物なので、弔事には付けません。
葬儀の香典を包む袋を買いに行って、店員に「のし袋のコーナーはこちらです」と案内された経験はないでしょうか。香典に使う黒白の水引の袋も、結婚式のご祝儀に使う紅白の袋も、日常ではまとめて「のし袋」と呼ばれることが多いのですが、厳密には香典の袋に「のし」は付いていません。
結論を先に書きます。
「のし紙」は慶事だけに使う名前で、弔事に使う紙は水引だけが印刷された「掛け紙」と呼ぶのが正しい区別です。のしという飾りそのものが慶事専用の意味を持つため、弔事にのし紙を使うのは避けるべきとされています。日常会話で「のし袋」とひとくくりに呼ばれてしまうのは通称の問題であり、実際に贈り物を選ぶ場面では区別して考える必要があります。
のし紙と掛け紙、紙の右上を見れば分かる
紙面右上の小さな飾りの有無で、のし紙か掛け紙かを見分けられます。
| のし紙 | 掛け紙 | |
|---|---|---|
| 右上の飾り | 熨斗(のしあわび)あり | なし |
| 水引の色の例 | 紅白・金銀など | 黒白・双銀・黄白など |
| 主な用途 | 結婚祝い・出産祝い・お中元など慶事全般 | 香典・法要の返礼・お見舞いなど弔事全般 |
| 通称 | 「のし袋」「のし紙」と呼ばれがち | 慣習的に「のし袋」と呼ばれることもあるが誤用 |
慶事用の紙にだけ右上に小さな飾りが付いていて、これが「のし」そのものです。弔事用の紙にはこの飾りがなく、水引の模様だけが印刷されています。
なぜ弔事にのしを付けないのか
のしの由来は、干したアワビの肉を薄く伸ばした「熨斗鮑(のしあわび)」という縁起物とされています。アワビは長寿の象徴とされ、贈り物に添えることで「長く続きますように」という願いを込める、慶事だけの飾りとして定着してきたと言われています。乾物である熨斗鮑は日持ちがすることから、「生ものではない、心のこもった贈り物」を示す意味合いも持っていたとされています。
弔事は繰り返してほしくない出来事であることに加え、慶事の縁起物であるのしを持ち込むこと自体が場にそぐわないと考えられています。そのためお悔やみの場では、のしの飾りを省いた掛け紙が使われ、水引も慶事とは異なる色の組み合わせが選ばれるとされています。
水引の結び方にも、この「繰り返してよいかどうか」という考え方が反映されています。何度あってもよいお祝い事には、ほどいて結び直せる「蝶結び」が使われる一方、結婚祝いや弔事のように一度きりであってほしい出来事には、固く結ばれてほどけない「結び切り」やその変形である「あわじ結び」が使われるとされています。掛け紙で結び切りが基本になっているのも、こうした意味づけの延長にあると考えられます。
間違えやすい場面
日常でのし紙と掛け紙を取り違えやすいのは、次のような場面です。
- お見舞い:入院中のお見舞いは慶事ではないため、のしなしの掛け紙、あるいは無地の袋を使うのが一般的とされています
- 快気祝い:病気が治ったお祝いは慶事に近い意味合いを持つため、のし付きの紙を使うのが一般的です。お見舞いとは向きが逆になる点に注意が必要です
- 通販サイトの「のし対応」表記:オンラインショップでは慶事・弔事を問わず「のし対応」と一括りに表記していることがあり、注文時に用途を選ぶ画面を見落とすと意図と違う紙が届くことがあります
- 法要の返礼品:香典返しや法要の引き出物は掛け紙が基本ですが、水引の色の慣習は地域や家によって異なることもあるため、迷ったら贈り先の慣習に合わせるのが無難です
- 企業の記念品や粗品:創立記念や式典の記念品は慶事にあたるため本来はのし紙ですが、社内での慣習として無地の包装で済ませる会社も多く、正式な贈答とは別扱いになっていることがあります
- 引っ越しの挨拶:新築祝いをいただいた場合のお返しはのし紙ですが、挨拶回りの粗品そのものにのしを付けるかどうかは地域差が大きく、簡易な包装で済ませる家庭も見られます
弔事と慶事のどちらに当たるか自体で迷う場面もあり、そうした場合は無理に自己判断せず、贈り先との関係や地域の慣習に詳しい年長者、あるいは贈答品を扱う店舗に確認するのも一つの方法です。
手を動かすなら
用途ごとにのしの要不要や水引の色を都度調べるのは、冠婚葬祭に慣れていないと意外と手間がかかります。のし・表書きを整える では、結婚祝いから快気祝い、お中元まで約25の用途を選ぶだけで、のしの要不要と水引の種類が早見表で分かり、紙面のプレビューも用途に合わせて切り替わります。香典を包む金額の目安まで確認したいときは、香典を整える と合わせて使うと、包む前の不安をまとめて解消できます。紙を選ぶ数秒の迷いをなくすだけで、贈り物の失礼を防げます。