年末調整の「所得」と「収入」はどう違う?──扶養控除等申告書でつまずく点
年末調整の書類では、同じ給与の話でも「収入」と「所得」が別の数字として出てきます。給与収入136万円が所得62万円になる計算と、令和8年分の扶養控除・配偶者控除・特定親族特別控除・基礎控除の基準を、国税庁が公表した表で整理します。つまずく点も。
この記事のポイント
- 給与所得=給与収入−給与所得控除。収入136万円は所得62万円(令和8年分)
- 扶養・配偶者控除は「所得62万円以下」で判定。収入と所得を取り違えやすい
- 「年収の壁を整える」「手取り計算を整える」で収入から壁と手取りを確かめる
- Q.
- 年末調整の「所得」と「収入」の違いは?
- A.
- 収入は給与の額面そのもので、所得は収入から給与所得控除を引いた金額です。令和8年分は、給与収入が220万円以下なら給与所得控除は74万円なので、収入136万円は所得62万円になります。扶養控除や配偶者控除の判定には、この所得を使います。
年末調整の書類を前にすると、「年収」「収入金額」「所得金額」「合計所得金額」と、似た言葉が並びます。扶養に入れるかどうかの欄では「所得」を書くのに、手元にあるのは給与明細の「収入」。ここでつまずく人が少なくありません。
結論を先に書きます。
給与の場合、所得は「収入から給与所得控除を引いた金額」です。令和8年分は、給与収入が220万円以下なら給与所得控除は74万円で、給与収入136万円が所得62万円にあたります。 扶養控除や配偶者控除は、この所得(合計所得金額)が62万円以下かどうかで判定されます(国税庁の公表、2026年10月時点)。
収入は額面、所得は控除を引いたあと
2つの言葉の違いを整理します。
| 言葉 | 意味 | 見る場所 |
|---|---|---|
| 収入(給与収入) | 給与・賞与の額面の合計 | 源泉徴収票の「支払金額」 |
| 給与所得 | 給与収入から給与所得控除を引いた金額 | 源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」 |
| 合計所得金額 | 給与所得のほか、事業・不動産・配当などの所得を合わせた金額 | 申告書の判定欄 |
給与だけで働く人なら、給与所得がそのまま合計所得金額になります。給与のほかに副業の所得や配当がある人は、それらの所得も足した金額が合計所得金額です。
給与所得控除は収入の額で決まる
給与所得控除の額は、給与収入の金額に応じて次のとおりです(令和8年分・令和9年分、国税庁タックスアンサー No.1410)。
| 給与収入 | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 220万円まで | 74万円 |
| 220万円超360万円まで | 収入×30%+8万円 |
| 360万円超660万円まで | 収入×20%+44万円 |
| 660万円超850万円まで | 収入×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
令和7年分は最低保障額が65万円でした。令和8年分から74万円になり、令和8年12月1日に施行されます。
たとえば、給与収入300万円なら、給与所得控除は300万円 × 30% + 8万円 = 98万円です。所得は300万円 − 98万円 = 202万円になります。
判定に使う基準は「所得62万円以下」
扶養控除や配偶者控除は、扶養される人の合計所得金額で判定します。令和8年分の基準は次のとおりです(令和7年分は58万円)。
| 控除 | 判定に使う所得 | 給与だけの場合の収入 |
|---|---|---|
| 扶養控除・配偶者控除 | 合計所得金額62万円以下 | 給与収入136万円以下 |
| 配偶者特別控除 | 配偶者の合計所得金額62万円超133万円以下 | 給与収入136万円超207万円以下 |
| 特定親族特別控除(19歳以上23歳未満) | 合計所得金額62万円超123万円以下 | 給与収入136万円超197万円以下 |
配偶者特別控除は、控除を受ける本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合の控除です。給与収入に直すと、136万円は62万円 + 74万円、207万円は133万円 + 74万円、197万円は123万円 + 74万円です。令和7年分は、扶養控除の収入基準が123万円、特定親族特別控除の上限が188万円でした。
特定親族特別控除は、19歳以上23歳未満の子などの合計所得金額が62万円超85万円以下なら63万円で、85万円を超えると段階的に減ります。給与だけなら、収入136万円超159万円以下が満額(63万円)の範囲です。
収入と所得を取り違える例
収入と所得を並べて、判定がどう変わるか見ます。給与収入の額から、給与所得控除(220万円以下は74万円)を引いた所得です。
| 給与収入 | 給与所得 | 配偶者・扶養の判定 |
|---|---|---|
| 100万円 | 26万円 | 62万円以下(控除対象) |
| 136万円 | 62万円 | 62万円以下(控除対象) |
| 150万円 | 76万円 | 62万円超(配偶者特別控除の範囲) |
| 197万円 | 123万円 | 特定親族特別控除の上限 |
| 207万円 | 133万円 | 配偶者特別控除の上限 |
「所得が62万円以下」と書かれた欄に、収入の額を書き込むと、判定を誤ります。申告書の欄が、収入と所得のどちらを求めているかを、見出しで確かめてから書いてください。
基礎控除も、合計所得金額で段階が決まる
本人の基礎控除は、合計所得金額が高くなると小さくなる仕組みです。令和8年分は次のとおりです(国税庁タックスアンサー No.1199。令和8年12月1日施行)。
| 本人の合計所得金額 | 基礎控除 |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 |
| 489万円超655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 62万円 |
| 2,350万円超2,400万円以下 | 48万円 |
| 2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
| 2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円 |
給与だけの人が、基礎控除104万円の範囲に入るのは、給与収入がおおよそ665万円までです。655万円超の区分に入るのは、給与収入が850万円を超えたあたりです(給与所得控除の式から計算した目安)。令和7年分は、132万円以下が95万円、132万円超336万円以下が88万円など、区分が違いました。
扶養控除等申告書と、年末調整の申告書
年末調整の対象になるのは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を年末調整を行う日までに提出している人です(国税庁タックスアンサー No.2665)。申告書の記入で気をつける点は次のとおりです。
- 見積りは1年間の合計で。 配偶者や子の収入は、年が終わる前でも、その年1年間の見込みで書きます。賞与や年末までの勤務を含めます。
- 12月31日の状況で判定。 扶養親族は、その年の12月31日現在の状況で判定されます。年の途中で収入が増えても、年間の合計で決まります。
- 特定親族特別控除には、ほかの要件もある。 19歳以上23歳未満であること、生計を一にしていること、控除対象扶養親族に当たらないことなどが条件です(国税庁タックスアンサー No.1177)。
年の途中で収入が増えそうな家族がいるときは、見込みの収入から所得を計算して、判定の基準を超えないかを先に確かめておくと、年末調整の書類を書き直さずに済みます。
収入から壁と手取りを確かめる
「年収の壁を整える」では、年収と立場(一般・19〜22歳の学生等・配偶者)を入れると、令和8年分の所得税・住民税・社会保険の壁のどれを超えているかを確かめられます。給与から引かれる税・社会保険料を引いた手取りの目安は、「手取り計算を整える」で出せます。
まとめ
- 給与所得は、給与収入から給与所得控除を引いた金額。収入と所得は別の数字
- 令和8年分の給与所得控除は、収入220万円以下なら74万円
- 扶養・配偶者控除は、合計所得金額62万円以下(給与のみなら収入136万円以下)
- 配偶者特別控除は合計所得金額133万円以下(収入207万円以下)まで
- 特定親族特別控除は合計所得金額123万円以下(収入197万円以下)まで
- 令和8年分の新しい金額は、令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用される