生成AIに「いい感じに」と頼むと何が起きる?──指示に入れる7つの要素
生成AIへの指示は、目的・役割・前提・入力・制約・出力の形・例の7つの要素に分けると書き漏れが減ります。Anthropic、OpenAI、Google の公開手引きに共通する考え方を、「いい感じに」と頼んだときに何が欠けるかから整理します。
この記事のポイント
- 指示を7つの要素に分けると、書き漏れに気づける
- 「いい感じに」は目的と出力の形が欠け、AIが推測で埋める
- 「プロンプトの書き方を整える」で7つの有無を確かめられる
- Q.
- 生成AIへの指示には何を書けばよい?
- A.
- 目的、役割、前提、入力、制約、出力の形、例の7つを順に考えると書き漏れが減ります。全部が必要なわけではありません。AIが推測で埋めると困る要素から先に書くのが現実的です。
「この文章、いい感じにまとめておいて」とAIに頼んで、返ってきた文章を読み、微妙に違うと感じる。直してほしい点を伝えようとして、自分でも何が違うのか言葉にできない。生成AIを仕事で使い始めた人が、最初にぶつかる場面です。
結論を先に書きます。
「いい感じに」で指示が足りないのは、AIの性能のせいではなく、渡した情報が少なすぎるからです。指示を「目的・役割・前提・入力・制約・出力の形・例」の7つの要素に分けて点検すると、何が欠けているかが見えます。
この考え方は、Anthropic、OpenAI、Google が公開している手引きに、呼び名は違っても重なって出てきます。まず、「いい感じに」と頼むと何が起きるかから見ます。
「いい感じに」で欠けているもの
先ほどの一言を、7つの要素に当てはめてみます。
| 要素 | 「この文章、いい感じにまとめて」で分かること |
|---|---|
| 目的 | 何のためにまとめるのかが無い |
| 役割 | 誰として答えるのかが無い |
| 前提 | 誰が読むのか、背景は何かが無い |
| 入力 | 「この文章」が貼られていないことすらある |
| 制約 | 長さ、使ってよい言葉、避けたい表現が無い |
| 出力の形 | 箇条書きか、文章か、メールの本文かが無い |
| 例 | 望む仕上がりの見本が無い |
見事に全部が空です。AIは、空いた部分を自分で推測して埋めます。その推測が、あなたの頭の中にある「いい感じ」と一致する保証はありません。違うと感じるのは、AIが間違えたというより、埋められた部分があなたの想定と違ったからです。
公開されている手引きは、何を挙げているか
3社の公開資料を読むと、7つの要素に相当する項目が、それぞれの言葉で並んでいます。
| 要素 | Anthropic(Claude) | OpenAI | Google(Gemini) |
|---|---|---|---|
| 目的・指示 | 明確で直接的に書く | Instructions | Clear and specific instructions |
| 役割 | 役割を与える | Identity | persona(役割の定義) |
| 前提・入力 | 背景を足す | Context | Add context |
| 制約 | 明確に書く | Instructions の中で書く | Constraints |
| 出力の形 | 応答の形式を指定する | 独立した節は無い | Response format |
| 例 | 例を効果的に使う | Examples | Zero-shot vs few-shot prompts |
Anthropic の「Prompting best practices」は、例について「3〜5個」を含めると良い結果になりやすいと書いています。また、指示の明確さを確かめる方法として、背景を知らない同僚に指示を見せて、戸惑わないか試すことを挙げています。OpenAI の「Prompt engineering」は、Identity、Instructions、Examples、Context の4つの節をこの順に置く構成を例示し、Context は通常、最後のほうに置くのが良いとしています。Google の「Prompt design strategies」は、制約、応答の形式、背景を、それぞれ独立した項目として扱っています。
資料によって見出しの数も名前も違います。ここで言えるのは、どの手引きも、目的、役割、前提、制約、出力の形、例といった情報を、指示に明示するよう勧めていることです。7つの要素は、それを日本語の仕事の場面で点検しやすいように並べ直したものです。
全部を書く必要はない
7つ全部を毎回書くと、指示が長くなりすぎます。大切なのは、AIに推測させると困る要素から書くことです。
- 社外に出す文章なら、前提(相手と場面)と制約(避けたい表現)
- 表に整えるなら、出力の形(列の名前と順)
- 好みが分かれる文体なら、例(過去に良かった一文)
逆に、挨拶文の誤字を直すだけなら、入力と制約だけで足ります。要素は「必ず埋める欄」ではなく、「漏れていないかを見るチェックの枠」と考えてください。
最初の依頼を直すと、たとえばこうなります。
社内の勉強会の案内を、参加を迷っている新入社員に向けて書き直してください。入力は下の文章です。200字以内で、「必ず」「べき」は使わず、メールの本文として出してください。
目的、前提、入力、制約、出力の形が入りました。役割と例は省きましたが、この場面では困りません。
手元で確かめるには
プロンプトの書き方を整えるは、貼り付けた指示文に7つの要素が書かれているかを、手がかりの語や形で確かめます。指示の良し悪しを判定するものではなく、書き漏れの目安を示す道具です。指示が長くなってきたときは、トークン数を整えるで、AIが一度に読める量に収まっているかの目安もつかめます。
なお、生成AIの使い方や各社の手引きは更新されます。この記事は2026年11月時点の公開資料を参考にしています。実際に使うときは、各社の最新の資料を確認してください。
出典
- Anthropic「Prompt engineering overview」「Prompting best practices」
- OpenAI「Prompt engineering」(API ガイド)
- Google「Prompt design strategies」(Google AI Studio のドキュメント)