ネットワークを整える
中級NTP・Syslog・SNMPを整える。
= 機器を見守る運用の三点セット
ネットワークのどこの話? 会社の LAN の中で、機器を管理する人が使う側の話です。利用者の通信とは別に、機器と管理用のサーバーの間を流れる管理用の通信です。
① NTP: 時刻を合わせる
時刻を持っている上のサーバーに聞いて、自分の時計を合わせます。上から何段目かが stratum(ストラタム)です。
矢印は「時刻を教える向き」。実際の通信は、下の機器が上のサーバーに聞きに行きます(UDP の 123 番ポート)。
1 段下がるごとに 1 増えます。15 の先は 16 で、「時刻が合っていない」という意味になります。
R1 のポートが落ちた(原因)→ そのせいで SW1 の OSPF 隣接が切れた(結果)、という実際に起きた順番のログです。SW1 の時計がずれると、集めたログの並びはどうなるでしょう。
Cisco IOS での設定と確認
Switch(config)# ntp server 192.168.1.10 Switch(config)# clock timezone JST 9 Switch# show ntp status Clock is synchronized, stratum 3, reference is 192.168.1.10 Switch# show ntp associations Switch# show clock
ログの時刻の頭の記号にも意味があります。* は時計が未設定、. は NTP を設定したが同期していない状態、記号がなければ正常です(下の ② で分解できます)。
② Syslog: ログを 1 か所に集める
機器が出すログには 0〜7 の重要度があります。数字が小さいほど深刻です。
| 数字 | 名前 | logging trap に書く語 | 意味・例 |
|---|---|---|---|
| 0 | Emergency | emergencies | 機器が使えない。致命的な障害でシステムが止まる |
| 1 | Alert | alerts | すぐ対処が必要。重要な部品の異常 |
| 2 | Critical | critical | 重大な状態。ポートセキュリティ違反(PSECURE_VIOLATION) |
| 3 | Error | errors | エラー。インターフェースが down(LINK-3-UPDOWN) |
| 4 | Warning | warnings | 警告。err-disable 状態になった |
| 5 | Notice | notifications | 通知(正常だが重要な出来事)。設定変更・OSPF 隣接の変化・回線プロトコルの up/down |
| 6 | Informational | informational | 情報。ログの送り先の開始・停止 |
| 7 | Debug | debugging | デバッグ。debug コマンドで出る細かい動き |
覚え方: 頭文字を並べた英文 Every Awesome Cisco Engineer Will Need Icecream Daily が、0 から 7 の順の E・A・C・E・W・N・I・D に対応します。
選んだ数字以下の重要度が送られます(warnings(4) なら 0〜4)。「4 より大きいものが送られる」ではありません。数字が大きいほど細かい情報で、debugging(7) は全部です。ログの送り先は logging host 192.168.1.30、通信は既定で UDP 514 番です。
③ SNMP: 状態を聞く・知らせてもらう
管理側のサーバー(マネージャ)と、機器の中の係(エージェント)の会話です。
| 版 | 確かめ方(認証) | 暗号化 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| v1 | コミュニティ文字列(合言葉)だけ | なし(平文) | 最も古い。文字列が盗み見られると読み書きされる |
| v2c | コミュニティ文字列(合言葉)だけ | なし(平文) | GetBulk・Inform・64 ビットカウンタを追加。安全性は v1 と同じ |
| v3 | ユーザー名+パスワードで認証できる | 暗号化できる | 認証と暗号化が使えるのは v3 だけ |
v1 と v2c の「コミュニティ文字列」は合言葉で、public や private のまま使うと誰でも読めてしまいます。v3 には 3 段階のセキュリティレベルがあります。
| v3 のレベル | 認証 | 暗号化 |
|---|---|---|
| noAuthNoPriv | ユーザー名だけ | なし |
| authNoPriv | あり(改ざん検知) | なし |
| authPriv | あり | あり |
! v2c の例(読み取り専用) Switch(config)# snmp-server community kaisha-RO ro ! Trap の送り先 Switch(config)# snmp-server host 192.168.1.20 version 2c kaisha-RO Switch(config)# snmp-server enable traps
設定の打ち方は Cisco IOSコマンドを整える で練習できます。
CCNA ではここが問われる
- CCNA 200-301 v1.1 の「IP サービス」に、NTP・SNMP・Syslog が入っています。
- NTP: stratum の意味(小さいほど時計に近い)、
ntp server、show ntp status。ポートは UDP 123。 - Syslog: 重要度 0〜7 の名前と順番、
logging trapは設定値以下が送られる。logging hostで送り先を指定。Cisco の既定は logging trap が informational(6)、コンソールは debugging(7)。 - SNMP: マネージャとエージェント、Get・Set・Trap、v1・v2c・v3 の違い。認証と暗号化があるのは v3 だけ。ポートは UDP 161(問い合わせ)と 162(Trap)。
ポート番号は ポート番号、機器の隣を探す仕組みは CDP・LLDPを整える、機器が IP を配る仕組みは DHCPを整える へ。
たとえると、工場の見回りの三点セット
機器が何十台もあると、1 台ずつ見に行けません。そこで三つのことをします。
- NTP(エヌ・ティー・ピー): 全員の腕時計を、駅の時報に合わせる。時計がバラバラだと、誰がいつ何をしたか並べられません。
- Syslog(シスログ): 各機器が書いた日誌を、事務所の 1 冊の日誌帳に集める。大事な出来事ほど赤字(重要度が高い)で書く。
- SNMP(エス・エヌ・エム・ピー): 事務所から「調子はどう?」と聞きに行く定期点検と、機器が自分から鳴らす非常ベル。
このツールは、ネットワーク全体図のここ
- 自分の端末
- 家・会社の中
- 出入口
- 建物の外
- 相手のサーバー
- データセンター
- 見る・動かす
全体を見る・動かす(運用・監視)— 機器の時刻合わせ・記録・状態の見張りで、ネットワークを日々守る話です。
全体を見る・動かすは、道路全体を映す管制室のような場所です。OSI では特定の層には決まらない。
「ブラウザで URL を打ってからページが出るまで」の 11 番目(うまくいかないときは「見る」)で活躍します。
前の段: HTTPステータス
このページに出てくる略語(6語)
- NTP (Network Time Protocol) — 機器の時計をネットワーク越しに正確に合わせる決まりごと
- UTC (Coordinated Universal Time) — 世界共通で使う標準の時刻。日本時間はこれより9時間進んでいる
- SNMP (Simple Network Management Protocol) — 機器の状態を集めたり、設定を変えたりする管理の決まりごと
- MIB (Management Information Base) — SNMP で聞ける項目を、番号つきで並べた一覧
- Syslog (Syslog Protocol(System Logging)) — 機器が出す記録(ログ)を集めて送る決まりごと
- AAA (Authentication, Authorization, and Accounting) — 誰か確かめる・何をしてよいか決める・何をしたか記録する、の3つの働き
このツールについて
ネットワーク機器を、遠くから見守って運用するための三つの道具です。時計を合わせる NTP、ログを集める Syslog、状態を聞き取る SNMP を、動かしながら整理します。
NTP で時計を合わせ、Syslog でログを集め、SNMP で状態を聞く。この三つが機器の運用の土台です。ログは重要度が小さい数字ほど深刻で、logging trap は設定値以下を送ります。コマンドは Cisco IOSコマンドを整える で練習できます。
主な機能
- NTP の階層(stratum)を図で見て、自分の stratum を計算できる
- 時計がずれるとログの原因と結果が逆に並ぶ様子をスライダーで確認
- Syslog の重要度 0〜7 の表と、logging trap で送られるログの確認
- Cisco のログ 1 行を facility・重要度・内容に分解
- SNMP の Get・Set・Trap の向きと v1・v2c・v3 の違い
よくある質問
Q. NTP は何のために使うのですか?
A. 機器の時計を、時刻を持つサーバーに合わせるためです。時計がずれていると、複数の機器のログを時刻で並べても、何が先に起きたのか分からなくなります。ポートは UDP 123 です。
Q. stratum とは何ですか?
A. 時刻の出どころから何段離れているかの数字です。原子時計や GPS が 0、それに直結したサーバーが 1 で、聞くたびに 1 増えます。数字が小さいほど時計に近く、16 は同期していない扱いです。
Q. Syslog の重要度は、数字が大きいほど深刻ですか?
A. 逆で、0 の emergencies が最も深刻で、7 の debugging が最も細かい情報です。覚え方は Every Awesome Cisco Engineer Will Need Icecream Daily の頭文字です。
Q. logging trap warnings を設定すると、どのログが送られますか?
A. 重要度 0 から 4 のログ(emergencies・alerts・critical・errors・warnings)が送られます。設定した重要度以下の数字が対象で、notifications(5) 以降は送られません。Cisco の既定は informational(6) です。
Q. SNMP の v2c と v3 は何が違いますか?
A. v1 と v2c は、コミュニティ文字列という合言葉だけで平文のまま通信します。認証と暗号化ができるのは v3 だけで、ユーザー名とパスワードで相手を確かめ、中身を暗号化できます。
入力値はURLの「#」以降に入るためサーバーには送信されません。リンクを開くと同じ状態を復元します。
続けて整える
この内容は、研修でも扱っています
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